平成27年第4回定例会(11月27日~12月16日 質問日:12月14日)
一般質問の内容
- 地域包括ケアシステムの推進について
意見・要望
団塊の世代が全て75歳以上になる2025年には、後期高齢者の人口比率の増加に加え、医療・介護のリスクが急激に高まり、医療・介護にかかる社会保障費が更に増加することが示されています。既に、わが国の医療では急性期から慢性期への治療、いわゆる治す医療から支える医療へ転換、シフトする方向で政策が誘導されています。
若年層では、病院で治療を受けた結果、病気が治って退院するのに対して、高齢者の多くは、慢性疾患によりある程度の治療を病院で終えると、病気をかかえたまま在宅へ退院していきます。
その意味で、高齢化率が急速に高まり高齢者人口が増加する都市部では、病院完結型の医療から、地域で支える医療の充実が先ずもって欠かせません。
いつまでも、住み慣れた地域で暮らすことができる地域包括ケアは、ある意味、自宅で、家族や地域の人々に看取られ、こころ安らかに最後を迎える体制づくりと言っても過言ではありません。
以前、内閣府調査では、「自宅で人生の最期を迎えたい」と希望する人が、全体の54.6%でした。
自宅で最期を迎えたい人は5割以上、しかしながら、実際に自宅で亡くなる人は全体の1割程度というのが現実です。
現在は、医療的な処置がある程度終わった後に長期間の入院が基本的に難しい反面、特養など介護施設への入所も原則要介護3以上ということになり、さらには減らない特養待機者と軽度介護者の受け皿不足が、在宅での看護・介護を一層困難なものにしています。
「できるなら、住み慣れた自宅で治療や介護を続けたい」という潜在的ニーズがあるのであれば、本人の希望と意思を尊重する地域包括ケアの理念である在宅医療を、本人や家族が選びやすい状況に、在宅医療・介護の資源を整えていくことが必要なはずです。
また、災害発生時における在宅医療の体制整備も喫緊の課題であり、早急に検討を進めていく必要があると思います。
当局におかれましては、地域医療は市町村の責務であることを自覚し、本気で障壁に向き合い取り組んで頂きたいと存じます。
介護保険法の改正により、全国一律で提供されてきた介護予防の訪問介護と通所介護については、市町村が地域の実情に応じて行う新しい介護予防・日常生活支援総合事業に移行することとなりました。
この総合事業は、要支援の高齢者などが住み慣れた地域で安心して生活できるよう、住民主体やNPOなどの多様なサービスの提供体制を構築し、高齢者を地域で支える体制づくりと言えます。
総合事業では、住民主体によるサービスの構築が求められていますが、ボランティアの在宅での活動を推進するため、介護支援ボランティア制度の対象を在宅活動に広げることは有効であると考えます。
地域包括ケアシステムには、行政だけでなく多様な主体が関わるため、行政は、「何のためにやるのか」を明確に意識して取り組み、その上で、地域住民を含めた多様な主体と同じ目標を共有することが重要です。
地域の課題や支援の担い手を洗い出し、その課題解決に向けて連携を強化し、必要とされる生活支援サービスを生み出していくという一連の「仕組みをつくる」ことが重要となってきます。
これは、まさに「地域の課題に対応できる地域をつくること」に他なりません。その意味で、住民と支援者双方に、これから取り組もうとする地域包括ケアについて理解してもらうことが必要です。
行政はアンテナを高くして、地域内の活用可能な資源を探り、その地域ならではの資源を有効に活用する視点が重要です。
地域ケア会議などは、このようなきっかけづくりのための場であり、多様な関係主体が一緒になって新しいアイディアを出したり、具体的な事業化の方法を検討したりすることが望まれます。
行政には、そうしたネットワークのつなぎ役を果たすことが期待されています。
当局におかれましては、以上をご勘案いただき、地域包括ケアの推進に取り組んでいただきたいと思います。
千葉市の現状
- 在宅医療と介護の連携推進に向け、本市では、まず、訪問診療を行おうとする医師が訪問診療医に同行する「訪問診療医師増強研修」を開始し、在宅医療の体制強化に努めています。
また、一つの事例を中心において、それぞれの専門的な視点からのアプローチ方法や支援策を話し合うことで、お互いの職責を理解する「多職種連携会議」を定期的に開催し、医療・介護の関係者が「顔の見える関係」を構築し、お互いの役割を理解した上での連携を図っています。
こうした取組みを通じて、タイムリーに必要な支援を市民に届けることができるよう、在宅医療の体制整備を進めて参ります。 - また、本市では、平時に顔の見える関係性を構築しておくことにより、災害時において、要介護者など避難が難しいと考えられる方々が円滑に避難することができるよう、避難行動要支援者名簿を作成し、町内自治会や民生委員に提供するなど、関係者が協力して支援する枠組みの構築に努めています。
災害発生時に、在宅医療の面でどのように対応していくかについても、今後、検討して参ります。 - 総合事業への移行時期については、条例で、原則、平成29年4月1日としておりますが、早期に移行することが可能となった場合は、平成28年度中に前倒しして実施することができる旨を規定しております。
サービスの提供内容や提供基準、事業者の指定基準など数多くの事項を設定する必要があること、また、総合事業を円滑に実施するうえで重要な役割を担うあんしんケアセンターの職員が、事業内容や介護予防ケアマネジメントの内容を十分理解できるようにするための研修や、サービス提供事業所の準備作業の時間も十分に確保する必要があることから、移行時期について慎重に検討しているところです。 - 総合事業のサービスメニューについては、事業対象者である要支援者が、その身体状況や認知症などの状況に応じて、必要なサービスを適切に利用できるようにすることが必要であり、この観点から現在、サービスの提供内容をどのように設定するかについて検討を行っているところです。
- 介護支援ボランティア制度の在宅活動への拡大については、支援を必要とする高齢者を、元気な高齢者が支える仕組みを作ることは、総合事業を推進するにあたり重要なポイントであると考えております。
そのため、平成25年12月から、地域団体による在宅高齢者への生活支援活動について、モデル事業を実施しているところであり、在宅におけるボランティア活動への拡大に向けて、モデル事業で得られた課題を整理・検討して参ります。