2011年10月 行政視察報告「大都市行財政制度調査特別委員会行政視察」(名古屋市)
平成23年10月31日~11月1日にかけて大都市行財政制度調査特別委員会で名古屋市並びに大阪市に行政視察に行って参りました。
今回は、その視察内容についていくつかご報告いたします。
名古屋市 視察項目の概要
課税自主権と税源涵養について
(1) 名古屋市税制研究会
名古屋市を取り巻く状況は、少子・高齢化の進展や地球環境問題の顕在化など社会状況の変化とともに、大きく変わりつつあり、このような背景のもと、市民の意識も多様化してきている。市民の二ーズを的確にとらえ、よりよいサービスを安定的に提供していくためには、自主・自立的な財政運営を進めていくことが極めて重要である。
このようなことを背景として、名古屋市が行っている税務運営についての考察から、大都市税制のあり方や法定外税など幅広く調査・研究するとともに、将来のあるべき税制の展望に至るまで検討を進めるべく、平成18年6月に財政局に研究会が設置され、財政局長から委嘱された有識者4人と財務行政を統括する市職員1人の計5人の委員により、5年間にわたって調査・研究を行ってきた。
名古屋市ホームページ
名古屋市の財政状況
名古屋市平成23年度当初予算のあらまし
名古屋市税制研究会について
【名古屋市税制研究会委員名簿】
役職 | 氏名 | 職種等 | 委員 | 森 徹 | 名古屋市立大学経済学部教授 |
---|---|---|
委員 | 前 田 高 志 | 名古屋市立大学経済学部教授 |
委員 | 伊 川 正 樹 | 名城大学法学部准教授 |
委員 | 松 田 有 加 | 九州国際大学経済学部准教授 |
委員 | 加 藤 久 美 | 前名古屋市財政局主税部長(~19年3月) |
委員 | 水 野 隆 昭 | 名古屋市財政局主税部長(19年4月~) |
※職種等は平成19年8月の中間報告時による。
検討テーマ
- 現行の課税制度の総点検(市民から信頼される税制)
- 大都市税制のあり方・法定外税の検討等(自主財源の確保)
- 税源涵養策の検討(将来の名古屋市を支える税制の展望)
(2) 税制研究会報告書
- ア 名古屋市税制研究会中間報告書(平成19年8月)
- 検討テーマ1.の現行の課税制度の総点検では、市民から信頼される税制の構築という観点から、市税の減免制度のあるべき姿について研究し、減免制度を検討する際の視点並びに名古屋市の減免制度の設計面・運用面の課題及び個別税目における検討方法を「名古屋市税制研究会中間報告書」に取りまとめ、平成19年8月に財政局長に報告したところである。この中間報告書の内容を踏まえ、財政局において点検作業が進められた結果、すべての減免措置について、廃止・維持・見直しの区分による評価が行われ、平成20年3月には、その評価に基づき、新たに市税減免条例を制定し、平成21年4月1日から施行された。
- イ 名古屋市税制研究会報告書(平成23年3月)
- 当研究会は、上記の検討テーマ1.に続き、検討テーマ2.法定外税等の検討や、検討テーマ③税源涵養策の検討を行った。調査・研究にあたっては、課税自主権の活用については、市税収入の確保そのものが目的ではなく、市税収入を財源として展開される各種施策の必要性や有効性が重要であるとの観点に立ち、様々な施策の所管局職員から、施策の現状や課題を聴取するなど、名古屋市が取り組んでいる重点施策の内容をできるだけ把握するよう努めたところである。
また、税源涵養についても、将来の市税収入の確保や充実が目的であることは言うまでもないが、税源涵養策の基本的方向としては、各種施策の展開を通じて都市の魅力を高めることが重要であるとの視点に立って検討を進めており、施策が重要であるとの認識では課税自主権の活用に関する検討と共通している。
主たる税源につては、すでに法定税目として、地方税法に位置付けられていることに鑑みると、法定外税を活用し、市税収入を大幅に拡充することは困難であるが、市が課税自主権のあり方についてひろく市民に情報を発信することは、市民一人ひとりが行政サービスのあり方を負担面も意識しながら考える契機となり、住民自治の熟度を高めるうえで重要なことである旨の報告書をとりまとめた。
≪参考≫ 法定外税と超過課税の概要
- 【法定外税】
- 法定外税とは、地方税法で定められた税目以外に、自治体が条例に基づいて独自に課税する税であり、その税収の使途を特定しない法定外普通税と、条例で使途を特定する法定外目的税の2種類に区分される。
自治体が法定外税を創設するためには、地方税法上、総務大臣と協議し、その同意を得ることが必要とされており、また、総務大臣は、以下の3つの要件に該当する場合を除き、同意しなければならないものとされている。- 国税又は他の地方税と課税標準を同じくし、かつ、住民の負担が著しく過重となること
- 地方団体間における物の流通に重大な障害を与えること
- 国の経済施策に照らして適当でないこと
- 【超過課税】
- 地方税法には、税率として規定され、自治体の判断で変更することができない税目がある一方で、税率が標準税率として規定され、自治体の判断で変更することができる税目もある。
超過課税とは、このうち税率が標準税率として規定されている税目について、条例で規定することにより、標準税率を超える税率で課税することをいい、「財政上その他の必要があると認められる場合」に認められている。
なお、地方税法上、税率に上限(制限税率)が設けられている税目については、その税率を超える税率を採用することはできない。