2013年5月 個人視察報告(福井県小浜市)

平成25年5月28日(火)、福井県小浜市へ視察に行って参りました。 今回は、その視察内容についてご報告いたします。

小浜市の食のまちづくり

小浜市は、飛鳥・奈良時代に、朝廷に海の幸や塩を献上していた「御食国」(みけつくに)としての歴史があり、この伝統ある食に着目し、食のまちづくりを推進しています。

安全な食をたゆみなく供給するためには、農林水産業をはじめとする産業の振興は欠かせません。また、食を大切にすることは、それを育む自然環境を保全することにつながり、食を通じて人と人との交流も生まれます。そもそも人が生きるうえで欠くことのできない食をとらえることで、教育の大切さも見えてきます。

このように、小浜市では、食を広範にとらえてまちづくりを行っています。

まちづくり条例の制定

小浜市は、2000年8月、「地域の資源を活かしたまちづくり」を進めようと、「食」を重要な施策の柱とした「食のまちづくり」を開始し、同年9月に、全国で初めての食をテーマにした条例が制定され、食のまちづくりの拠点施設として食の文化の博物館「御食国若狭おばま食文化館」が開館しました。この会館は、御食国若狭おばまの食に関する歴史・伝統・文化の展示の他、キッチンスタジオという公開型の調理室も備えており、生涯食育の拠点施設として、乳幼児から高齢者まで、ほぼ毎日様々な特色ある料理教室や食育講座などが行われています。

生涯食育事業の一例として、「キッズ・キッチン」があり、これはよくある「料理を」教えることを目的とした子供の料理教室ではなく、「料理で」子どもの様々な能力を引き出すことを目的とした、言わば人間教育の場となっています。さらに、市内全ての保育園、幼稚園の年間行事にも組み込まれ、義務教育ではなく「義務食育」体制と呼んでいます。

視察に訪れた時も、キッズ・キッチンが開かれていましたが、親は見守るだけで、幼児だけで全ての作業をこなしていました。包丁やガスなど、幼児にはまだ早いと思われがちな調理器具も上手に使いこなすことで、「ひとりでできた!」という自信に満ち溢れた子供たちの笑顔が多く見られました。この教室では明確な達成感や満足感を得られるような教室につくりに努めているそうです。

中でも鮮魚の手さばきは、直接「命」に触れる貴重な体験で「命」をいいただいていること、命の大切さを学び、また、料理を通して、コミュニケーション能力や協調性といった生きる上での大切なスキル、料理という「もの」を作り上げる行為を通じて、物事をやり遂げる自信や達成感を得るようにとの教育プログラムです。このようにキッズ・キッチンの成功体験は、子ども達を成長させ、家庭において食を大切に考えるきっかけとなり、食環境や人間関係にまでも変化を及ぼす力となっています。

その他、小・中学生の料理「ジュニア・キッチン」では、人として生きる上での大切なこと、「命の大切さ」を理解させると共に、積極的に魚をさばくとうい内容を取り入れ、「食べることは、他の命をいただくこと」ということを体得させ、感謝の気持ちやもったいないと思う心を育てるという思いがあります。

市内の全ての小中学校では、学校区の中で収穫された野菜などの食材を使う校区内型の学校内地場産学校給食にも取り込んでいますが、この地場産学校給食を始めたことで、子ども達が生産者と交流を持つ機会が増え、学校給食における食べ残しも格段と少なくなり、子ども達の欠席率も減少したということです。

福井県小浜市は、このような食育による「まちづくり」を、市当局・市民・事業者が協働で取り組みながら推進しておりましたが、食は教育の一環であるという内容で、食の大切さを学ぶことの重要性を、改めて感じた視察となりました。

以上