2018年8月 個人視察報告(我孫子市 産後ケア事業)
2018年8月28日(火)、産後ケア事業について我孫子市を視察しましたので、以下、ご報告致します。
1.調査事項
我孫子市は、平成27年度から産後ケア事業を実施。同市における産後ケア事業の開始に至る経緯や、具体的な取組み内容を視察した。
(1)対象者:産後ケア事業の対象者は、産後2か月未満の産婦及び乳児であって、次に掲げる要件のいずれにも該当するもの。
①本市の住民基本台帳に記録されていること。
②家族等から十分な家事、育児等の援助が受けられないこと。
③産後に心身の不調又は育児不安等があること。
④病院等への医療管理入院を要しないこと。
(2)具体的なサービス:
事業の種類 | 内容 | 実施方法 | 利用基準 |
産後ショートステイ | 母体ケア、乳児ケア、育児に関する指導、心身のケア、育児サポート等 | 母子を医療機関等に宿泊させ実施 | 原則7日以内 |
産後デイケア | 母子を医療機関等に通所させ実施 | 原則7日以内 | |
ママヘルプサービス | 家事支援、乳児ケア、育児サポート、相談等 | 訪問介護員等を自宅に派遣し実施 | 原則28日以内
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・実施施設の選考方法
【産後ショートステイ・産後デイケア】
近隣において産後ケア事業を実施している医療機関等で、母子保健医療対策等総合支援事業の実施について(平成17年8月23日雇児発第0823001号厚生労働省雇用均等・児童家庭局長通知)に基づく「産後ケア事業運営要綱」による事業運営が確保できる医療機関等とする。
【ママヘルプサービス】
社会福祉士及び介護福祉士法第二条第二項に規定する介護福祉士又は介護保険法施行令第三条第一項各号に掲げる研修課程を修了した訪問介護員を使用する事業者で、市主催のママヘルプサービス事業の研修を受けた訪問介護員を派遣する。
(3)自己負担額
事業の種類 | 市民税課税世帯 | 市民税非課税世帯 | ||
産後ショートステイ | 3,000円/日 | 1,000円/日 | ||
産後デイケア | 個別 | 1,900円/日 | 600円/日 | |
集団 | 9:30-13:00 | 1,200円/日 | 400円/日 | |
9:30-15:00 | ||||
ママヘルプサービス | 500円/時間 | 無料 |
※但し、生活保護世帯等は無料。
2.産後ケア事業を開始するにあたっての市民の要求、当局での論議について
(1)市民の要求
平成26年4月に、市内で産後ケア事業を実施している助産院院長、千葉県助産師会会長と市議会議員が来所され、助産院が独自で実施している産後ケア事業の利用状況や市の助成があれば利用しやすい等の利用者の声が寄せられた。更に、県内市町村の産後ケア事業の実施状況報告及び我孫子市での事業開始への要望があった。
(2)局内での論議
本市の取り組みとして「誰もが生涯をとおして、健康で自立した生活を安心しておくれるまちづくり」の実現に向け、保健師、看護師、社会福祉士等の専門職を含む8名に、庁内の部や課を超えた「健康寿命延伸に熱意を持つ」公募の若手職員6名を加えた総勢14名で構成した『健康寿命延伸プロジェクトチーム』が平成24年度に発足しました。
その後、平成25年に『定住化検討プロジェクトチーム』、平成26年に『少子化対策プロジェクト』と庁内の部や課を超えた若手職員によるプロジェクトチームに展開されていく中で、庁内各課への提案事業がありました。
産後ケア事業は、平成26年の『少子化対策プロジェクトチーム』から事業提案があり、平成27年度に事業化しました。
3.産後ケア事業の実績と利用者の声について
(1)利用実績
年度 | 産後ショートステイ | 産後デイケア | ママヘルプサービス | ||||
利用人数(実) | 利用日数(延) | 利用人数(実) | 利用日数(延) | 利用人数(実) | 利用日数(延) | 利用時間(延) | |
27 | 23 | 140 | 20 | 62 | 37 | 448 | 697 |
28 | 37 | 225 | 17 | 42 | 28 | 348 | 533 |
29 | 47 | 287 | 32 | 117 | 38 | 503 | 762
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(2)利用者の声
平成29年度の利用実績としては、産後ショートステイ47人、産後デイケア32人、ママヘルプサービス38人で、利用された方からは、『身体を休めることができて本当に良かった。教え方も丁寧だった。』や『授乳についても教えてもらえて良かった。』などの意見も聞かれ、産後の育児不安の軽減につながっています。
産後デイケア(個別)では、『ゆっくり眠れた。身体が楽になり助かりました。』、『助産師と話ができて不安も解消された。』、『母乳指導が受けられ、助産師がとても親切でよかった。』、産後デイケア(グループ)では、『リフレッシュができました。』、『他のママとも話ができた。』などの意見も聞かれました。
4.予算と財源の確保について
歳入
科目 | 平成29年度 | 平成30年度 |
妊娠・出産包括支援事業(国庫補助金) | 2,808,000円 | 4,226,500円 |
ママヘルプサービス利用料 | 341,000円 | 432,000円
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歳出
科目 | 平成29年度 | 平成30年度 | |
委託料 | 合計 | 8,843,720円 | 11,477,200円 |
産後ショートステイ・産後デイケア分 | 6,176,720円 | 8,453,200円 | |
ママヘルプサービス分 | 2,667,000円 | 3,024,000円 |
※その他として、消耗品費、通信運搬費を支出。
母子保健衛生費国庫補助金(妊娠・出産包括支援事業) :補助率1/2
5.現状の課題、問題点
・近隣市でも産後ケア事業が開始されたこともあり、産後ケア実施施設の利用定員を超える申込が重なった際の調整が困難である。複数の利用申請者について、優先度を選定することは難しい。
・出産予定日を元にケアプランを作成しており、実際の利用日が変更となることが多いため、産後ケア実施施設に空きがない等、再調整が困難な場合がある。
6.視察の感想
現行の短期間では満たされない産後ケアを、その後のデイサービス型で補うことは有用であり、特に育児不安が強いケースや、虐待が心配されるケースでは、ショートステイやデイサービスなどの産後ケアが今後求められてくることは必須です。千葉市においても産後デイサービスは、さらなる子育てサービスの充実につながると思われました。