平成28年第4回定例会(11月25日~12月14日 質問日:12月8日)
一般質問の内容
- 産後ケアについて
- 海浜病院について
意見・要望
産後ケアについて
産後ケアについてですが、昨今、我国の母子保健や育児を取り巻く状況においては、母子保健の水準が大幅に改善する一方、晩婚化や子育て家庭の家族構成が多様化し、さらには地域の繋がりの希薄化や地域において妊産婦や家族を支える力が脆弱化するなど、大きく変化していることは、本市においても同様と思われます。中でも晩婚化の進行は、当然、母親の平均出産年齢を引き上げることが予想されます。例えば、平成25年度の厚生労働白書の数値で、出生した時の母親平均年齢は、第1子が30.3歳、第2子が32.1歳、第3子が33.3歳と既に30代を超えており、今後も年々上昇していくことが見て取れます。また、出産年齢の上昇は妊産婦の身体的なリスクを高めることに加え、当の妊産婦の親もまた、高齢となって十分に妊産婦を支えることができない状況が一般化すると思われます。
その意味で、妊娠中や出産後に体調が悪く、家事や育児が困難な孤立化している妊産婦に対して、本市が取り組んでいるエンジェルヘルパーは、より身近な場で妊産婦を支えるという点で一定の評価はできます。
しかしながら、「赤ちゃんを沐浴させることが大変なのにできない」、「買物には量的な制限がある」「エンジェルヘルパーさんに、赤ちゃんをお願いして近くの銀行へお金も下ろしに行けない」等々、使い勝手の悪さが利用されている方々から聞こえるのも事実です。また、「父親など母親以外の家族が在宅中はエンジェルヘルパーを使えない」ということは、自営の方や祖父母が高齢で育児援助ができない場合、如何なものでしょうか。当局におかれましては、是非、利用されている方々の意見を参考に、柔軟に制度運営を行い、これまで以上に、エンジェルヘルパーの中身を充実させて頂きたいと思います。
産後ケアでは授乳支援、乳房ケア、骨盤ケアなどが受けられます。そして、このように助産師などの専門スタッフと必要なケアプランを立てます。特に、宿泊型の産後ケアでは、助産師さんに夜間の乳児の世話をお願いできるため、母親はゆっくりと体を休めることができます。また、出産により弱っている母体に対し栄養面を考慮した食事が提供さています。さらには、希望によって、母子以外の家族に対しても育児に関する相談・助言などの支援を受けることも可能です。このように産後ケアで、専門のスタッフから支援を受けることは、出産後の母親には大変心強いものとなっており、併せて産後うつの予防にも繋がります。
このように昨今は、妊娠・出産包括支援事業の開始に伴い、地域の病院・診療所や助産所が市町村の求めに応じて、宿泊型の産後ケア事業を実施するケースも増えております。先に述べましたように、女性の出産年齢の高齢化によって、その子の祖父母も高齢化している等、出産後、家族等から十分な育児援助が受けられない家庭に対して、母子への心身のケアや育児のサポートは大変重要となります。特に、夜間の育児支援をしてくれる家族が身近にいないなど、出産直後の支援不足が顕著になっている場合、身近な地域に宿泊型の産後ケア施設が存在することは、母親や家族の心身の負担軽減、育児に対する母親の不安解消等に大きく寄与するものと期待されます。
確かに、宿泊型産後ケア事業は、実施している市町村により利用料金は様々であり、また、市町村の利用料金補助の状況も異なっているという課題もございます。しかしながら、本市が実施された産後ケアに関するアンケートの結果を踏まえ、さらには厚労省の先進事例や既に実施している自治体を参考にしつつ、早急に当該事業に取り組まれますよう、併せてお願いいたします。
千葉市の現状
- 市では、生後4か月までに全ての家庭を訪問する乳幼児家庭全戸訪問事業により母子の孤立化の防止に努めています。
さらに、妊娠中や出産後間もない時期に昼間、家事や育児の手伝いをしてくれる人がいないご家庭等にヘルパーを派遣する「エンゼルヘルパー派遣事業」や、保育所等への送迎や一時的な預かりなどの子育て援助を行う「ファミリー・サポート・センター事業」等を実施しております。
また、区健康課では、保護者同士の情報交換・親子あそびを通して育児不安を解消し、友だちづくりのきっかけになることを目的に各子育てサークルの紹介などを行っております。 - 宿泊型産後ケア事業については、平成28年3~4月に、4か月児健診を受診した保護者を対象に、産後ケアに関するアンケート調査し、その結果、産後に希望するサービスとして4割を超える方が「産婦自身の休息」「授乳方法・乳房(にゅうぼう)ケアの相談」希望するという結果を得ています。
今後は、これらを踏まえ、産婦の休息に対応した宿泊やデイケアを提供できる「施設利用型」に加え、助産師などの専門職が各家庭に伺って、乳房ケアなど様々な相談に対して支援や助言を行う「訪問型」も、適宜選択できる複合型の支援体制の導入に向け検討していきます。
意見・要望
海浜病院について
自治体の公立病院が厳しい経営状況にあるということは、本市に限らず全国的な傾向となっています。このことは、ある意味、自治体の病院事業が独立採算制の原則による公営企業としての経済性の追求と、公立ゆえに公共の福祉の増進を目的とした公共性を優先させる性格を併せ持つため、如何に効率的な経営をもってしても、なかなか厳しい経営状況から脱却できない状況が見て取れます。
しかしながら、医療介護総合確保推進法の意義でも謳われているように、「団塊の世代」が全て75歳以上となる2025年を見据え、医療や介護が必要な状態となっても、できるかぎり住み慣れた地域で安心して生活を継続し、その地域で人生の最後を迎えることができる体制整備に、自治体病院が果たす役割は大きく、また、その中心的な機能が求められます。当局におかれましては、県が作成する医療計画に際して、是非、これまで以上の連携を図り、効率的で質の高い医療を提供できるよう、病院事業に取り組んでいただきたいと思います。
次に、医師や看護師、その他のコメデカル・スタッフ等の確保が難しい昨今、修学資金貸与制度などを利用した看護師や、医師をはじめとした医療従事者の確保に当局が努力されている様子が、ご答弁からも窺えました。その上で、既に現場で働く医療従事者の負担を軽減するための病棟区画の配置や導線の見直し、更には電動ベッドの増設など働く者の環境改善に関しても、取り組んでいただきたいと思います。働く環境を良くすることが、従事者の過度な負担を低減すると共に、貴重な人材の定着に繋がり、結果として就職希望者にも選ばれる病院になるということ、この点を是非、当局はご認識いただきたいと思います。
さらに、海浜病院が周産期母子医療センターや小児医療の積極的な対応を図られているなら猶のこと、特に、24時間体制で気の抜けない新生児病棟の夜勤にあたる看護師等の負担は、かなり大きいものとなっておりますので、適切な対応をご検討くださいますようお願いします。
現在、海浜病院に関しては、建物・医療機器の機能維持や老朽化対策が大きな課題となっている中、計画的に建物修繕や機器の更新を図られていることが理解できました。今後、ますます深刻となる建物の老朽化対策に当たっては、公立病院としての海浜病院が目指すべき方向性や、将来的な病院機能のあり方を明確にした上で、実現可能な対応をご検討いただくようお願いいたします。
以上、当局におかれましては、このような点を十分ご勘案いただき、海浜病院の機能並びに医療サービスの向上に取り組まれるようお願いします。
千葉市の現状
- 海浜病院では、小児医療においては、日本小児科学会並びに千葉県の地域小児科センターに位置付けられ、市内の小児二次救急医療の中心的な役割を担っており、本年6月からは夜間小児二次救急搬送の全日受入れを開始し、更に11月からは、病児の療養環境の向上を目指して、病棟保育士を配置しました。また、周産期医療は、高度な医療を提供できる地域周産期母子医療センターとして、県の保健医療計画に位置付けられ、市内産科救急の中核を担い、早産や低出生体重児が予測される場合などのハイリスク分娩に対する専門的な二次医療を行っておりますが、増加する入院需要に対応するため、本年6月に一般病床の3床をNICUに転換し、15床に増床しました。
- 海浜病院の建物・医療機器の機能維持や老朽化対策についてですが、海浜病院の老朽化は深刻であり、病院の機能維持のため、計画的に、建物の修繕や医療機器の更新等を実施しております。例えば、昨年度、手術室の空調設備の改修工事や放射線専用の排水設備であるRI排水設備の防水改修やX線防護建具等の修繕を行い、医療機器では、経年劣化した全身用のデジタルX線撮影システムやPCPS遠心ポンプ等を更新しました。今年度は、外壁の落下を防止するための外壁改修工事や厨房空調設備の改修工事を予定しているほか、吸収式冷凍機やX線防護建具等の修繕を予定しております。
- 千葉市立病院看護師等修学資金貸与制度は、市立病院に就職する意思のある助産学生や看護学生の修学を容易にするとともに、市立病院において安定的かつ継続的に必要な助産師及び看護師を確保するための奨学金制度です。
平成26年度から本事業を開始し、将来の市立病院を担う、有為な人材の確保に繋がっております。